尿酸と食生活
メタボリックシンドロームの研究などにより、体内で尿酸が増える原因はプリン体を多く含む食品の摂取だけではなく、肥満による内臓脂肪の増加が深くかかわっていることが明らかになりました。
痛風の原因となるプリン体の多い食品
100g中にプリン体を200mg以上含む食品を「高プリン食」といいます。食品中に含まれるプリン体は、体内に入るとそのほとんどが腸管内で分解されるため、プリン体が多い食品を極端に多く食べない限り、尿酸値の上昇の直接的な原因にはならないことがわかっています。また、日常生活で毎日低プリン食をつづけるのは難しいということも、プリン体の多い食品を食べることをきびしく制限しなくなった理由の一つです。実際、プリン体の制限のみでは、血中尿酸は1.0mg/㎗程度しか低下しないといわれています。ただし、痛風発作を起こしているときは、プリン体を多く含む食品は避けるようにしてください。
プリン体の多い食品と少ない食品
極めて多い(300mg~)
鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう肝酒蒸し、カツオブシ、二ポシ、干し椎茸
多い(200~300mg)
豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物
少ない(50~100mg)
ウナギ、ワカサギ、豚ロース、豚バラ、牛肩ロース、牛肩バラ、牛タン、マトン、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、ツミレ、ほうれんそう、カリフラワー
極めて少ない(~50mg)
コンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼ちくわ、スジコ、さつま揚げ、カズノコ、ウインナーソーセージ、豆腐、牛乳、チーズ、バター、鵜卵、とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、米類、パン、うどん、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、ひじき、わかめ、こんぶ
プリン体の多い健康食品に注意
サプリメント、機能性食品、特定保健用食品など、いろいろな健康食品が販売され、忙しくて栄養のバランスのよい食事がとれない人たちに愛用されています。しかし、これらの健康食品の中には、プリン体を多く含んでいるものがあるので、注意が必要です。特に多いのは、DNA・RNAで、100gあたり21493・6mgのプリン体が含まれています。また、クロレラには100g中3182・7mg、ビール酵母には2995・7mgも含まれています。DNA・RNAの健康食品を1日に100gも飲むことはないと思いますが、健康食品を毎日とっている人は、一度、プリン体の量を計算してみることをおすすめします。
肥満は尿酸を増やす
メタボリックシンドロームの研究から、食べすぎや運動不足によって肥満となり、内臓脂肪が体内に蓄積されると、脂肪細胞からさまざまなアディポカイン(生理活性物質)などが分泌され、そのために尿酸値が上昇することが判明しています。痛風の食事療法でも、プリン体の多い食品を極端に制限するよりも、1日の総摂取カロリーの制限をして、脂肪とタンパク質のとりすぎを避ける食事療法が行われています。肥満は、万病のもとです。食生活にあまり神経質になる必要はありませんが、プリン体の多い食品を食べすぎると尿酸値が上昇するということは理解しておきましょう。
プリン体の1日の摂取量
高尿酸血症や痛風を防ぐ食事のポイントは、高プリン食を控え、1日のプリン体の摂取量を400mgを超えないようにすることです。鶏のレバーやマイワシの干物、干し椎茸などは、100g中に300mg以上含まれていますので、食品中のプリン体含有量をできるだけ正確に知ることが必要です。
プリン体の正しいとり方
プリン体の正しいとり方のポイントをまとめると、次のようになります。
①プリン体を多く含む食品をつづけて大量に食べないようにしましょう。
②食品に含まれるプリン体は、煮ると食品から煮汁にとけ出します。魚介類や肉類を多く使う鍋ものやすき焼きの煮汁にはプリン体が濃縮されているので、ごほんにかけて食べたりしないで、できるだけ残すようにします。また、同じ鍋の中の野菜類は汁のプリン体をたっぷり吸い込んでいるので、食べすぎないようにしましょう。逆に、鍋ものやすき焼きの肉のプリン体含有量は、そのまま焼いて食べる焼き肉などよりも少なくなっています。
痛風の食事療法は、栄養バランスのよい食事が基本
痛風の食事療法は、糖尿病の食事療法と基本的には同じです。患者さんの標準体重に合わせて、摂取カロリーを制限することが第1の目的です。痛風の食事療法の3大ポイントは以下の通りです。
①動物性脂肪をとりすぎない。
②アルコールを控える。
③1日にとる総摂取カロリーを減らす。
これは、痛風だけではなく、脂質異常症(高脂血症)や糖尿病などの生活習慣病全般にあてはまります。さらに痛風では、次の2点が追加されます。
④水分を多めにとる (1日に2ℓ以上)。
⑤プリン体を多く含む食品をとりすぎない。
痛風の患者さんの多くは、食べすぎでエネルギー過多になっており、余分な栄養が脂肪となって蓄積され、内臓脂肪型の肥満になっています。肥満は、メタボリックシンドロームの最大の原因でもあり、痛風で肥満の状態がつづくと、動脈硬化が進み、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)などを併発しやすくなります。